あたしはさまよっていた。
果てしない空。
淵の無い海。

あたしはかこまれていた。
こだまする声。
ありえない世界。

「芳音さん。うち此処。」
どこからか、声がした。
「此処?誰?」
「芳音さん。うちらはずっと一緒だったよ。きみが現世で生まれた時から、今でも。」
「ずっと一緒だった?何言ってんの?あたしはそんなこと知らない。」
「うちは、あなたの力。あなたの斬魄刀。」
「何それ。ぜんぜん理解できないんですけど。」
そこで、あたしは斬魄刀とかなんとかについて、長い説明をくらった。

あたしはようやく理解した。
ある一言であたしは寒気を覚えた。

あたしの死因。
虚に殺されたそうだ。
すごく動揺した。
死んだ今ではどうでもいいことなのに。

「で、あなたは、あたしの斬魄刀なの?」
「そう。一心同体だし。」
「だったら、なんで今になってあたしの前に現れたの?」
「それは、あなたの霊力は高まってきたし、そろそろうちが出ても大丈夫と思って。それに、芳音さんも此処、流魂街で一生を過ごそうとは思ってないよね。」
「それはそうだけど。ていうか、此処でも死ぬことがあるの?もう一度、みんな死んでるのに。」
「はい。現世で死んだら、魂はここに来るけど、ここで死んだら、存在自体がなくなってしまう。でも、寿命は異常に長いから、老死はないよ。」

二度も生きねばならない。
異常にプレッシャーがかかった。
そして、斬魄刀が武器だということも自覚はしていた。
つまり、殺しあう世界なのだ。

「ということだから、うちはきみの現世での一生をみて、うちの主にふさわしいと判断した。きみには、これからも人々を守ってほしいから、うちの能力を教える。うちの名前は如月。それだけ覚えて。」

ふと視界が消えた。
そよ風が吹き、あたしは久しぶりに家族のことを思い出したようだった。

気がつくと、戻っていた。
すべてが。
あたしは、寝る前と同じように、粗末な小屋の中に布団を引いて、寝ていた。
いつしか、朝になっていた。

あたしの手には如月があった。

外に出て、改めて如月を眺めた。
長く、紫がかった藍色の鞘に、純白の鍔。上に鳥が月をかこんでいるような絵が彫ってあった。

「よろしくお願いします。」

「夕鳥で目覚めろ、如月。」
考えもせずに言葉が口から流れ出した。

 

 

 

前へ  次へ