雛森の誕生日

今日は6月3日。
瀞霊廷では6月とは思えないほどの蒸し暑い日々が続いていた。

そんな時、十番隊では...
「たいちょお~」
「うるせ~ぞ、松本」
日番谷はいつも通り顔も上げないで冷たく言う。違いは日番谷の顔が火照っていること。
「今日って何の日か知ってますう~?」
「何の日って、総隊長に大切な書類を提出する日だろ。それでお前が仕事かたずけないから俺がやってるんだろ、代わりに。」
「違いますよ~。そんなのなんかほっといて、考えて下さい。」

書類を‘そんなの’と言ったな。俺が誰のせいでこんなに苦労してるのか、分かってんのか?こいつ
日番谷は心の中で乱菊を怒鳴った。

そんなことを考えていたら、日番谷の眉間に皺が寄った。

「今日は大切な日でしょ。隊長にとって。」
そう言われると、日番谷は真剣に考えてしまうのだ。
しかし松本がそういっているのだ。信じがたい。
でも乱菊が真剣そうなのを見て、日番谷は考えた。

「もったいぶらずに言えよ、松本。」
口調が何かと子供っぽくなった。

「誕生日。」
乱菊が日番谷を促す様に言った。
「誕生日?」
「そっ、雛森の。」

雛森のか。日番谷はオウム返しした。

「で、せっかくなので、潤林安でお祝いすることになりました!」
「ばあちゃんちか。っていうか、誰が決めた?!」
「わたし。私たちと、あと、吉良と、阿散井と、七緒と、やちるちゃんも行くからね。」
「あんなちっちぇ家にはいらねえよ」

「まっ、と言うことで決まり。私は潤林安に行って準備してきますから、隊長は速く仕事終わらせて、潤林安に来てくださいね!あと、プレゼント忘れないで下さいよ!」
乱菊はそういって、飛び出した。

「おっ、おい!松本!!!」
乱菊は無視したので、日番谷は今度、窓の外に向かって叫んだ。
「ばあちゃんち壊すなよ!!」


* * * * * *


というわけでその日の午後、太陽が山を下る時。
みんなは潤林安の日番谷の祖母の家に集まった。

「乱菊さん!シロちゃん!」
雛森はもうついている。
「だからその呼び方はやめろよ。それより何でもうついてるんだ?」
「藍染隊長がね、今日一日休暇をくれたの。」

「あっ、ヒッナアだ!」
やちるが真っ先に雛森に飛びついた
「こんにちわ、やちるちゃん。」
「わたしね、今日ヒッナアの誕生日だから、剣ちゃんがくれた金平糖いっぱい持ってきたよ!」
「ありがと」

まさか金平糖とは。雛森はそんなことになるとは思いもしなかった。

「よう!雛森。」
「こんにちは、雛森さん。」
阿散井と吉良だ。
「阿散井君、吉良君。こんにちは~」

その時、七緒が瞬歩でやってきた。
「七緒さん。こんばんは。」
「こんにちは、雛森さん。京楽隊長が僕も雛森ちゃんに会いたいって、しがみついてきて。ふり払うのに時間がかかってしまいました。」

みんなが家に入った。ギュウギュウ詰めだ。
乱菊が早速、
「ええ、みんな集まったから雛森の誕生会、始めます!
 その前に、雛森と、うちの日番谷隊長のおばあちゃんに一言二言言ってもらいます!」
そして、みんなの視線がニコニコしているおばあちゃんに集まった。

「いつもうちの桃と冬獅郎がお世話になっています。今日はみんなで楽しくやっていってください。」
そして、恥ずかしそうにはにかんだおばあちゃんはなんだか子供の様だった。

「今日はおばあちゃんが張り切って作ったお料理をたべます。終わりごろにみんなでプレゼントを雛森に渡したいとおもいます!」
乱菊がとっさに続けた。

食事が始まった。特に喜んでるのはやちるだ。
「ああ~!このおもち金平糖の次においしい!
 あっ、これも、これも。
 みんなおいしい!!!」
と、わいわいがやがや騒いでいた。

吉良と七緒はいつも通り無言で食事を進ませていた。
時々食べ物をおばあちゃんややちるに薦められては笑顔でそれを食べた。

阿散井は乱菊に強制的に酒を飲まされて酔ってしまった。明日には朽木隊長に怒られるだろう。この分では、絶対に二日酔いだ。

乱菊は阿散井と酒を飲み、阿散井が倒れた後は、日番谷と雛森と遊んだ(本人にとっての遊び。日番谷にとっての迷惑。)

おばあちゃんは若者達が暴れているのをただニッコリと見守っていた。

そして、いよいよプレゼントだ。
「うっわあ~!たのしみ!」
雛森はやけにはしゃいだ。

「じゃ、じゃ、あたしから!」
と、雛森に大きな袋を差し出したやちる。
中身は金平糖だった。
「今日の分の金平糖をヒッナアに上げる」
いかにも自慢げであった。

これが一日分...
みんなはあきれ返った。

次は吉良。
「お誕生日おめでとうございます。この前、現世で買ってきた飴です。どうぞ。」
飴を渡す。
「ありがとう。食べてみるね。」
雛森が飴を口に入れた。誰から見てもかわいらしい仕草であった。
「これ桃味だ!」
幸せそうに雛森は歓声をあげた。

「レンレンはなにあげるの?」
やちるが聞く。
「俺はなあ、桃だ。」
そう言いながら阿散井が懐から何かを取り出す。
そして奇声をあげた。
「桃が潰れとる!」
ガーン!

「恋次のはおいといて、私は現世からへあぴん(ヘアピン)を買ってきました!」
乱菊はかわいいヘアピンを取り出した。
桃色の生地に小さなコサージュがあった。
「ありがとう!」

予想通り、乱菊さんがくれるものはいつもかわいい。
雛森は心からそう思った。

雛森は早速ヘアピンを髪につけた。

「私からはこれです。」
七緒は一生かけても読み終わりそうにないような、分厚い本を雛森にあげた。
「あっ、これ。」
前から読みたかった本だった。
「あなたが欲しがっていたので...」
七緒が遠慮がちに言った。
「ありがとう!七緒さん!」
七緒は少し照れた。

「最後はひっつ~だね!」
やちるが無邪気に言う。

くそっ、聞かれたか。
日番谷はその場から消えたい気持ちであった。

「シロちゃんは何くれるの?」

「だまれ!バカ桃!」
そう言いながらも何かを取り出した日番谷。
それは、桃の枝に咲いた一輪の桃の花だった。

「シロちゃん?」
「プレゼントだよ、それが。」
雛森はだまった。そして、何かひらめいたように、笑顔になった。
「ありがとっ!」
自然と言葉が出てきた。

「それでこそ、いつもの雛森だ。」
日番谷が言った。

* * *

いい夜だったな、と雛森は思った。
みんなからのプレゼントをおばあちゃんがくれた手作りの巾着に入れた。
日番谷からの桃の枝は部屋に飾ることにした。

* * *

日番谷と乱菊は十番隊隊舎に戻ろうとしていた。

「今日の隊長、なんかかっこよかったです。」
ふと、乱菊が言った。

「何言ってんだ。嘘つくな。」
いつもの素っ気無い声だった。

「ふう。
 そうだ!隊長、隊舎まで競争しましょ!」
そう言って、乱菊は消えた。

「おい!まてっ、まつもと!!!」
日番谷隊長の一面だ。

* * *
P.S 阿散井からの桃はやちるが干し桃作りに挑戦している。